司法書士法人みずほ総合法務事務所|岐阜・愛知・三重

相続財産の調査・確定(財産目録の作成)

被相続人が残した相続財産を調べて、財産目録や一覧表を作成しておきます。
それをすることによって、どのような財産がどれだけあるのかを把握することができますので、相続をするのか放棄をするかの判断などができます。
遺産分割の基本資料になりますので、速やかにかつ正確に行う必要があります。
もし、漏れがあると、遺産分割をやり直したり、相続税の申告漏れになってしまうこともあるので注意が必要です。
相続財産の調査とともに、財産目録(一覧表)にまとめていきますが、特に決まった様式というのはありません。
なお、ここでいう相続財産には、資産(土地・預貯金・株式など)のみならず、負債(借金など)も含まれますが、被相続人その人個人に与えられた権利・義務、資格など一身に専属したものなどは除かれます。

相続財産とは

相続の手続きの中で重要なことのひとつに、相続税がかかる財産がどれくらいあるのかを調べる手続きがあります。相続税の対象となる財産には大きく分けて、次の3つに分けることができます。

@本来の相続財産

相続人による遺産分割の対象となる財産のことです。

A生前の贈与財産

相続により財産を取得した者が、相続の開始日から3年以内に取得した被相続人からの贈与財産のことです。これらの財産はすでに被相続人の所有から外れていますが、相続税の計算上は本来の相続財産に上乗せします。

Bみなし相続財産

本来的に被相続人の財産ではありませんが、相続税の計算上はこれを相続財産とみなして本来の相続財産に上乗せする財産のことです。死亡保険金、死亡退職金などがこの分類に属します。

相続される財産の範囲

相続する財産は、相続開始のときに、被相続人の財産に属した一切の権利・義務となります。
ただし、被相続人その人に与えられた権利・義務・資格など一身に専属したものは除かれます。

プラスの財産(積極財産)
  1. 不動産(土地・建物)
  2. 不動産上の権利(借地権、借家権、地上権、抵当権、定期借地権など)
  3. 動産(現金、家具、自動車、貴金属、書画骨董など)
  4. 有価証券(小切手、株式、社債、国債、手形など)
  5. 債権(銀行預金、貸付金、売掛金など)
  6. その他の財産(著作権、商標権、意匠権、著作権、ゴルフ会員権など)
  7. 被相続人が保険者で受取人になっている生命保険
  8. 電話加入権

生命保険についての補足

被相続人が保険料を負担していた場合、受取人を指定していれば、その保険金は直接保険の受取人の固有財産になり、遺産分割の対象とはなりません。
相続人が相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができます。
ただし、相続人が受取人の場合、他の相続財産を分割するときに、生命保険金を取得したという事実が特別受益として考慮されることはあります。

@受取人を「相続人の誰か(例えば妻)」としてある場合

保険金は相続財産になりません。保険契約に基づき、受取人に指定してある相続人(この場合は妻)が全額を受け取ることになります。したがって、遺産分割の対象となる相続財産には含まれません。
ただし、受け取った保険金が特別受益として考慮されることはあります。

A受取人をただ単に「相続人」としてある場合

相続財産とはいえませんが、相続人全員が保険契約に基づき保険金を受け取ることになりますので、遺産分割協議の対象にはなります。

B受取人を「被相続人」としてある場合

相続財産となります。保険契約に基づき支払われる保険金は、一度被相続人に帰属するからです。したがって、遺産分割協議の対象になります。

=保険金と税金=
被保険者
保険料負担者
保険金受取人
税金の種類 
被相続人
被相続人
相続人
相続税
被相続人
相続人
相続人
所得税
被相続人
相続人
相続人以外
贈与税

マイナスの財産(消極財産)

  1. 借金(借入金、買掛金、手形債務、未払金、損害賠償の支払いなど)
  2. 税金(未払いの所得税、住民税、固定資産税など)
  3. 預かり敷金
  4. 保証、連帯保証債務(責任の額が明確な場合)

相続されない財産

  1. 一身専属権(扶養請求権、生活保護受給権、国家資格など)
  2. 使用貸借権
  3. 仏壇、位牌、墓地、墓石などの祭祀財産
  4. 香典、弔慰金、葬儀費用
  5. 人的な義務(身元保証、信用保証、根保証債務など)
  6. 死亡退職金、遺族年金
  7. 生命保険金請求権
相続財産の評価方法

相続によって取得した財産の評価は相続開始時点の時価で評価します。
「遺産分割」は、財産の相場を基準に行いますが、相続税の申告に用いる財産の評価額は、国税庁の通達「財産評価基本通達」に従って行います。
そのため、一般的な相場と実際の評価では異なった額になることもあります。
遺産の評価については相続税の申告で重要になってきますが、かなりの専門知識が要求されるうえ、非常に厄介です。
申告に際しては専門家の力を借りるのが無難だと思います。

評価項目(財産の種類)
評価方法
土地 農地 純農地・中間農地  倍率方式=固定資産税評価額×倍率
市街地周辺農地 市街地農地の80%の額
市街地農地 倍率方式、または宅地比準方式=宅地比準額(その農地が宅地であるとした場合の価額)−宅地造成費
宅地 市街地にある宅地  路線価方式=「路線価×宅地面積」を土地の位置や形状により補正した額
路線価のない宅地 倍率方式=固定資産税評価額×所定の倍率
山林 純山林,中間山林 倍率方式=固定資産税評価額×倍率
市街地山林 その山林が宅地であるとした場合の価額−宅地造成費
私道 不特定多数の人が利用している場合 評価しない
特定の者のみ利用している場合 通常の宅地評価の30%で評価
土地の上に存する権利 耕作権 農地の自用地としての価額×(1−耕作権割合)
永小作権 農地の自用地としての価額×(1−残存期間に応じる割合)※定めがない場合は40%
地上権 自用地の評価額×権利の残存期間に応じた割合 
借地権 (原則)自用地としての価額×借地権割合
家屋 家屋 固定資産税評価額
貸家 固定資産税評価額×(1−借家権割合)
借家権 固定資産税評価額×借家権割合(概ね30%)
建築物 門・塀等 再建築価額−経過年数に応じた減評価
庭木・庭石・池等 調達価額の70%相当額
有価証券 株式 上場株式 原則として相続開始日の終値、その月の終値の月平均額、その前月の終値の月平均額、前々月の終値の月平均額 のうち、最も低い価額を評価額とします。
気配相場のある株式 上場株式に準じて評価
取引相場のない株式 会社の利益・配当・資産価値または相続税評価基準による純資産価額
預貯金 普通預金・
通常貯金
相続開始日の残高
定期預金 相続開始日の残高+相続開始日に解約した場合の利子額
死亡退職金 受取金額−非課税枠(500万円×法定相続人の数)
生命保険 受取金額−非課税枠(500万円×法定相続人の数)
利付公社債 発行価額と相場価格のいずれか低い方+既経過利子の手取額
割引公社債 課税時期の最終価格(上場公社債)または、「発行価額+既経過償還差益の額」(その他)などによって評価
一般動産 調達価額
調達価額不明のものは新品小売価額−経過年数に応ずる減価の額
書画・骨董品 売買価額及び専門家による鑑定価額
貸付信託 元金+既経過収益の手取額−買取割引料
自動車 調達価額(課税時期において、その自動車を現況により取得する場合の価額)または、(新品の小売価額−経過年数に応じた減額)のいずれかを選択
電話加入権 取引相場がある場合は取引価額、取引価額がない場合は国税局長が定める標準価額
ゴルフ会員権 取引相場×70%

※掲載情報については、執筆時の法令と一般的な事例に基づいております。法改正等に対応できていない場合や具体的な事案には相当しない場合がありますのでご了承願います。